まいったな。
肩に寄りかかって寝息を立てているファーストエイドを横目で見てダージは息をついた。
さっきまであんなにはしゃいでいたのに、この様だ。
自分が食べたい、と言ったくせに押し付けられたままのアイスを舐めてもう一度溜息をつく。
期間限定なのだとチラシを見せてきて暗にねだったファーストエイドを思い出してダージは苦笑いを浮かべた。
今居るベンチの周辺は人気がないのが幸いだろうか。
ぼんやりと街のイルミネーションを見ながらがりがりコーンを囓る。
少し寒くなってきた。
大体冬にアイスを食べるというのが間違っている気がする。
いや、暖房の効いているところでなら良いかもしれない。
だが日の落ちた屋外のベンチで、というのは遠慮したかった。
吐き出した息は更に白い。
とんとん、とファーストエイドを叩いてダージは声を掛けた。
「風邪引くぞ」
うぅ?と身じろぎしたファーストエイドははっとした顔で起き上がった。
「うわ…ごめん!」
「ああ」
頷いたダージの胸倉を掴むとファーストエイドは泣きそうな声で詰め寄る。
「なんで起こしてくれないの?!ていうか寝かせないでよ!」
シャツを掴んだ手をやんわりと解いてダージは困ったように眉を下げた。
「俺のせいか?」
「…ううん」
落ち込んだように頭を抱えたファーストエイドの髪をくしゃ、と撫でてアイスを突き出す。
「これ、食ったら帰ろう」
俺はもう駄目だ、とマフラーを巻き直してダージは肩を竦めた。
コーンを銜えてほとんど溶けかけたアイスを飲むように食べるとファーストエイドは立ち上がったダージを見上げた。
「もう帰るの?」
「…まだ帰らないのか?」
苦笑いしてすとん、と隣に座り直したダージにファーストエイドがひっつく。
「綺麗だな」
ごく自然にファーストエイドの肩に手を回してダージは呟いた。
ぎゅっと引き寄せられて頬を染めたファーストエイドは小さく頷く。
「もうすぐクリスマスか…」
独り言のように言ったダージの顔を見上げてファーストエイドは尋ねた。
「クリスマスはどうするの?」
「クッ、クリスマス?」
とたんに声を裏返らせてダージは慌てた顔をした。
それが可笑しくてファーストエイドが笑うと少しむっとする。
「笑うな」
むくれたダージの頬をつついてファーストエイドは身を乗り出した。
「私は、空いてる」
囁かれた言葉にかっと顔を赤くしてダージはファーストエイドを押しやった。
「お前は〜…」
何か言い掛けてやめたダージはマフラーをもう一度巻き直すと勢いよく立ち上がった。
「帰るぞ!」
「え?ちょっと…ダージ!」
すたすた歩き出したダージを慌てて追い掛けながらファーストエイドは頬を膨らませた。
照れ屋なんだから、と呟かれた言葉はマフラーに赤い顔を埋めたダージには届かなかった。
*2008/12/13