打ち込んだ文字を消しては打ち直し、を幾度か繰り返した後、スカイファイアーは苛々と指をキーボードの上で彷徨わせていた。
どうということはない書類のはずなのに、どうにも上手く行かない。
今スカイファイアーの顔を見る者がいれば、常にない彼の厳しい表情にきっと驚いたはずだ。
目は鋭さを増し、真一文字に引き結ばれた口元には、いつもの人の良い笑みの欠片も残ってはいなかった。
普段通り自分をコントロール出来ない苛立ちと困惑の中でなんとか冷静になろうと努めてみるものの、スカイファイアーは湧き上がってくるむしゃくしゃした思いを抑えられなかった。
こんなくだらない書類などさっさと放り出してしまいたかったが、彼は始めたことはやり遂げねばすまない性分だったし、なにより、こんな書類に敗北を認めるのは彼のプライドが許さなかった。
モニターを睨みつけるスカイファイアーの後ろからすっと手が伸びてきて、ことりと小さな音を立ててエネルゴンが置かれた。
「大分煮詰まってるみたいじゃないか」
落ち着いた声にスカイファイアーは疲れたような唸りで答えた。
ふふっという小さな笑いに彼は顔を顰め、乱暴にエネルゴンを引き寄せると一気に飲み干した。
「君の方は大分ご機嫌なようだな、フォートレス」
「私に当たらないでくれよ。向こうに通信が入っていたから用事ついでに伝えに来ただけさ。お蔭で君が頭を抱えて唸ってる、なんて珍しいところが見られた」
「フォートレス!」
スカイファイアーが噛みついてもフォートレスは笑ってそれを受け流した。
「少し外に出たら良い。君は篭もりすぎるよ」
「それはお互い様だろう。私はこの仕事が終わるまで外に出る気はないね。わざわざそんなことを言いに来たのか?」
フォートレスの顔に悪戯っぽい表情が浮かび、なかなか肝心なことを言わない彼をスカイファイアーは苛々と促した。
「もうすぐ遠征隊が帰ってくると連絡があってね。私は出迎えに行こうかと思ったんだが、君はまだ仕事が終わらないみたいだし……」
「全く君も人が悪いな」
スカイファイアーは額を押さえて溜息を吐いた。
「たまにはからかわせてくれ、こんな機会は滅多にあるもんじゃない。それはそうと、行くんだろう?」
「お供させてもらうよ。迎えに行くと彼と約束していたことだし」
「良い気分転換になるだろう」
「そう願いたいね」
あんなに離れがたかったデスクの前からさっと立ち上がったスカイファイアーをフォートレスが笑う。
少しばかり自分が浮かれているのをスカイファイアーは自覚していたが、抑えがたい苛立ちに似てその喜びも抑えるのは至難の業だった。
*2010/03/06