セイバートロンは変わらず美しかった。
その姿が見えると、スカイファイアーはいつも溜息をつきたくなるのだった。
探査はいつも彼に尽きぬ興味と感動を与えるが、それを合わせたよりももっと大きな幸福を、帰還するたびに彼は感ずる。
宇宙にも彼を待つものがたくさんある。だがこの母なる星で彼を待っていてくれるものがあることは、何よりも幸せなことだ。
ぴったりのタイミングでゲートが開き始め、スカイファイアーは滑り込みながらトランスフォームした。
滑走路に備え付けられたモニターに、映像が出る。
「ご苦労さん」
とりあえずシャワーをどうぞ、とサンダークラッカーが手を振る。
それに手を振り返してスカイファイアーは薄暗い通路を歩き出した。
四六時中無駄に明るいのは賛成しないが、人が通る時くらいは明るくしてくれてもよさそうなものだ、と思っている内にいつかすっかり慣れてしまった道だ。
目をつぶっても歩けるだろう。
外からおかしなものが持ち込まれないように、ゲートへの道は他の区画と分厚い扉で仕切られている。
消毒液のシャワーを全方位から浴びせてもらわない限り、内へは入れない。
「スカイファイアー」
シャワールームから漏れるぼんやりとした明かりに、白い翼が浮かび上がった。
スカイファイアーは驚いて足を止め、近付いてこようとする影を制止した。
「スタースクリーム!何でここに入ってきた?」
そうすることの危険性をスタースクリームは重々承知しているはずだ。
「何で、って居ちゃ悪いか?」
不機嫌な声がさらに近づき、もうその顔を判別できるほどの距離になった。
少し細められた目に苛立ちを読み取って、スカイファイアーは困惑した。
「下がってくれ、スタースクリーム。まだ安全じゃない」
「安全か安全じゃないかは俺が決めることだ」
「そういう理屈はウイルスには通用しないんだ!スタースクリーム!」
後退ったスカイファイアーにスタースクリームは顔を顰めた。
「迎えに来てやったのに嬉しくないのか?」
「そりゃ嬉しいさ!でもそのせいで君が病気になったら困る」
運が悪ければもっとひどいことになりかねない。不吉なので口に出しては言えないが。
「お前が治せばいいだろ」
簡単に言ってくれる。思わず苦笑してスカイファイアーは首を振った。
「そんな冒険はしたくないよ」
[スタースクリームこの馬鹿野郎そこで何してる!]
言い返そうと口を開いたスタースクリームを通信機からの怒鳴り声が遮る。
突然の大声にびくりと肩を揺らしたスカイファイアーに、彼は馬鹿にしたような笑いを浮かべた。彼は悠々と構えすぎだ。
[ここで待ってろって言っただろうが!我慢出来ないにも程があるぞ!シャワー浴びてこなかったら扉に挟んでやるからな。……ったく見え透いてるんだよ!]
涼しい顔をしていたスタースクリームの表情が、サンダークラッカーの最後の言葉で崩れた。
「見え透いてる?」
スカイファイアーは首を傾げた。
彼にはわからなかった。サンダークラッカーの言うことも、スタースクリームが顰めっ面をしている理由も。
「いいから黙って入れ!」
ぷいっと向きを変えてスタースクリームはシャワールームに入ってしまった。
スカイファイアーは状況について行けずひたすら困っていたが、シャワールームの中から早くしろ!という声が飛んできたので反射的にそれに従った。
*2010/02/02