midair





肩にのしかかる重みに耐えられるのももうそう長いことではないだろう。足の震えに舌打ちしつつ、スカイワープはもう一度ずり落ちそうになるラムジェットの身体を掴み直した。ずるりと滑るのは、漏れ出たオイルのせいか。まだ意識を取り戻さない身体は協力的ではない。
せめて肩を掴んでくれれば、随分楽になるだろうに。スカイワープ自身も無傷ではないだけに、意識のないラムジェットを運ぶのは易しいことではない。ラムジェットを置いて行くという決断ができない自分が忌々しい。
「くそ……」
またラムジェットが滑り落ち掛けている。捕まえようとして、指が滑った。同時についに耐えきれなくなった膝が地面にぶつかる。ラムジェットは地面に倒れ、スカイワープはその隣に蹲った。
痛いというよりも己の無力が悔しくて、長い呻きがもれる。ラムジェットが起きてくれればと思ってしまうのも、スタースクリームが来てくれればと思ってしまうのも、うんざりしているくせにやめられない。
スカイワープ、と聞こえた微かな声がその呻きを止めた。はっと顔を上げると、スカイワープは膝をついたままラムジェットににじり寄った。
「どこだ?」
不明瞭ながら、先ほどよりは力の戻った声が尋ねる。スカイワープが答えられずにいると、ラムジェットは僅かに口を開いて笑いの形を作った。
「お前、俺を?置いて行けばよか」
「ラムジェット」
言わせるものかとスカイワープは言葉を遮った。
「それを言うな。俺の努力が無駄になる」
は…と力のない口からもれたのは笑いなのか息なのか。聞くだけでは判別できなかったが、ラムジェットの顔を見る気にもなれず、スカイワープはどさりと地面に座り込んで足を投げ出した。傷を受けた足は、無理をおして歩いたせいでぼろぼろになっている。
「酷いな」
ラムジェットが呟くのが聞こえたが、スカイワープは急にどっと襲ってきた疲れに指一つ動かせなかった。そのまま、ぼんやりと足だか地面だかを眺めていると、視界の隅にラムジェットの手が映った。
「お前だけなら」
随分明瞭になった声でラムジェットは言いかけて、途中でやめる。ちらりと伺うように見上げた顔と目があって、ラムジェットらしくない神妙な表情にスカイワープは笑いだしそうになったが、ぐっと堪えた。
ラムジェットはしばらくスカイワープを見ていたが、その目に笑いの影を見て取ったのか、いつもの顔で笑う。それにほっとして、スカイワープも思い切り声を上げて笑った。
「スタースクリームだったら置いてっただろうなぁ」
ラムジェットが笑いながら、スカイワープの足に触れる。故意か偶然か、その手が内部機構が露出しかけた爪先に当たり、知らずぎくりと身体に力が入った。
「スカイワープ?」
わざとだな。ラムジェットの顔を見てスカイワープはため息をついた。その途端ぐいっと足を引かれ、慌てて腕をつく。
「何をっ……」
ラムジェットは掴んだスカイワープの足を目の前に掲げて、小さな火花が散るのに目を細めた。
「この分だけは、お前の言うことを聞いてやろう」
言いながら足の甲に押し当てられた口に、スカイワープは顔をしかめた。
「また馬鹿なことを。オイルだらけの口で何を言ってる」
「怒るなよ。さあとっとと帰ろうぜ」
乱暴に顔を拭って、ラムジェットはあっさりと相変わらず汚れた顔で言った。




*2014/09/07(Twitterお題小話"4時間以内に1RTされたらスカイワープにラムジェットが冗談交じりに足の甲に隷属のキスをするところを描き(書き)ます http://shindanmaker.com/257927")