彼は、いつも人を食ったような笑顔を浮かべてばかりだったのに。
デッドエンドは顔を顰めた。違う、笑顔じゃない。あいつの表情はさっぱり分からない。ただ、そういう風に見えるというだけのことだ。
スィンドルの一つ目がデッドエンドは嫌いだった。元々スィンドルに対して何かしら良い感情を抱いたことなどないが、特にあの目が苦手だ。どこを見ているのか分からない、それでいて常にこちらを見ているかのような、得体の知れない光。その奥を覗くのをデッドエンドはいつも避けていた。こちらから見えれば、それはあちらからも見えているということだ。スィンドルにこれ以上見透かされるのは我慢出来ない。
だから、あれは偶然だった。デッドエンドは小さく唸って消えない残像を振り払おうとした。
吹き飛ばされたデッドエンドの側にスィンドルが来て、腕を乱暴に掴んだ瞬間。顔を上げたデッドエンドは一瞬、目の前にいるのがスィンドルだとは思わなかった。覗き込んでしまった光にいつもの嫌な笑みは浮かんでいなくて……
デッドエンドはもやもやした感情を持て余して虚空を睨んだ。あれを何と表現すれば良いのか、彼にはわからなかった。ただわかるのは、スィンドルがあの瞬間驚くほど真剣だったということだけだ。俺を活躍させるために張り切ってるのか、などと言って次の瞬間にはデッドエンドを苛つかせるいつものスィンドルに戻っていたが。
蘇ってきた苛立ちに任せてデッドエンドは壁を蹴りつけた。またスィンドルのせいで。なんであいつにこうも振り回されなきゃならないんだ。スィンドルの顔を思い浮かべつつデッドエンドはがつがつと壁を蹴り続けた。
*2012/03/10