midair





 俺がいなくなったら、きっとあいつは死んでしまうだろう。
 ちらりとそんなことを考えて、スィンドルは思わず肩を揺らして笑った。彼の新しいパートナーは決して弱いわけではないが、隙だらけで危なっかしい。しかし、デッドエンドを守ろうとか成長させてやろうだとか、スィンドルが思っているわけではなかった。むしろデッドエンドの嫌がるところをつついて、ムキになって噛みついてくるのを面白がっている。その単純さがいけないのだと教えてやる気にもならなかった。
 そんなことばかりなものだから、デッドエンドはしょっちゅう早く別の奴と組みたいとぼやいている。一度だけスィンドルはそのぼやきに、俺はお前を守ってやってるんだぞ、と返したことがあった。その時は本当にそんなことを思っていたわけではなく、単なる思いつきで言っただけだ。けれど、そんなに間違いではないな、とスィンドルは後になってから思い始めていた。
 扱いやすい駒を欲する者は少なくない。自覚して駒になることと、自覚せずして駒になることとは全く違うことだ。スィンドルは単純で変に素直なデッドエンドを他の連中の良いようにさせるつもりはなかった。
 デッドエンドがそれを自分自身の選択だと思うように、さりげなく選択肢を用意して、そっと背中を押す。その密かなゲームがスィンドルには楽しくて仕方なかった。
 俺がいなくなったら、あいつは死ぬかもしれない。そして、あいつがいなくなったら、俺も退屈でたまらなくなるだろう。だから、大事に大事にしてやろう。
 早く帰ってこい、とまだ戻らないデッドエンドを思い、すぐに名案を思い付いてスィンドルは立ちあがった。デッドエンドはまた思い切り嫌な顔をするだろう。機嫌良く目を瞬かせて彼は足早に部屋を出た。




*2012/03/06