その白は、初めからダージの中の何かを疼かせた。
好きだというのとも、嫌いだというのとも違う。
ただ気になる。視界の隅を白が過ぎるだけで、じわりと何かが動く。
他の皆ももしかしたらそんな気持ちにならないだろうかと尋ねてみたかったが、それを一体誰に尋ねれば良かっただろう?
問いたくても形にならないこの感情を、誰と分かち合えたろう?
とりわけ今のような戦闘中にその白を捉えると、疼きは一層激しくなった。
追い詰められている気さえする。
多分、戦場の興奮と合わさって余計にそうなるのだ、とダージはどこか冷静に思った。
冷静でいなければ、この感情に呑まれる。そんな気さえするから、彼はいつも以上に自分をコントロールしようとした。
「ダージ」
周りの轟音に負けないように、張り上げたスラストの声が呼ぶ。
間近に現れた赤はなんとなくダージをほっとさせた。
「スタースクリーム達、もう行くってよ」
ということは、もう彼らは行ったということだ。戦いに加わりつつも意識を飛ばしていた自分に、スラストはわざわざ知らせに来てくれたらしい。
「ラムジェットは」
視界の片隅にいたはずの白は、そういえばいつの間にかいない。
あー、と言いつつ辺りを見回して、スラストが声を上げた。
「お楽しみの真っ最中、ってとこだな」
彼が苦笑いしながら指さした先を見て、ダージは密かに顔をしかめた。
じわりと滲みだした感情は、やはり明確には掴めない。
ラムジェットの纏った白が、爆発の光を映して赤く燃え上がる。
そしてその次の瞬間には、鋭い輝きを持って獲物を切り裂いているのだ。
犠牲者の残骸に汚れても彼の白が損なわれることはなくて、それが余計にダージの感情を揺さぶる。
戦場のあらゆるものを映しながら走る白を見ていると、ひどく落ち着かない。
突き立てた刃を勢いよく抜いて、ラムジェットはそこでの征服を終えた。
放り出された犠牲者のスパークが弱々しく光り、彼の足下を淡い青に染めている。
「全くよくやるよな、あいつも。絶対作戦のことなんて忘れてるぜ」
呆れに、少しだけ感心を混ぜてスラストが呟く。顔を上げたラムジェットがこちらを見、やけにゆっくり見える仕草で地面を蹴った。
ラムジェットが来るのを待ちながら、ダージは小さく息を吐いた。
もしかしたら、これは憧れなのかもしれない。本当に純粋なるものへの、憧憬。渇望と恐怖をない交ぜにした、そんな感情。
輝かんばかりの白が破壊を残して飛んでくる。そっと目を伏せて、ダージは首をもたげたざわめきを押し込んだ。
*2011/01/17