midair





 見慣れた背中を見つけてスカイファイアーは思わず足を速めた。
 名前を呼んで、手を伸ばして、肩先に触れようとして。
 指が空を掴む。
「スタースクリーム」
 呼ぶのに彼は振り向かない。
 走っても追いつけない。
 遠のいていく背中、翼に刻まれた逆さまのエンブレムが笑う。
「スタースクリーム!」
 精一杯の声で叫んで、スカイファイアーは膝をついた。
 苦しくてどうかなってしまいそうだ。荒くなった呼吸が呼ぼうとする意志を妨げる。
 再び立ちあがることもできなくて、彼は痛むスパークを抱えて座り込んだ。

 
 乱れた呼吸は夢の中と同じだった。
 起き上がってスカイファイアーは呆然と暗闇を見つめた。嫌な夢だ。
 気分を落ち着けようと幾度か意識して深く息を吸う。
 呼吸の乱れは収まったが、スパークの鈍痛は止まない。
 スカイファイアーは胸に手を滑らせ、そこにあるエンブレムを確かめるように撫でた。
「スタースクリーム……」
 呼んだ名前は闇に消えて、スカイファイアーは押し潰されそうなほどの孤独を感じた。
 自分達二人を繋ぐものなんて、結局のところ存在するのだろうか。
 仲間であると、繋がっていると、こんなちっぽけで頼りないエンブレムだけを拠り所に、思っていてもいいのだろうか。
 どうしようもなく孤独だ。
 早く朝が来るように、早くこの暗闇が消えるように、スカイファイアーは目を閉じた。




*2010/10/17