「起きてるんだろう」
レーザーウェーブの声にサウンドウェーブは少しだけ顔を持ち上げた。
微かにしか反応しなかったのではなく、できなかったのだ。
武闘派ではないと自他共に認めてはいても、彼がここまでやられるのは久しぶりのことだ。
見上げたレーザーウェーブの顔は、少し苛ついているようだった。
サウンドウェーブよりはましであるものの、レーザーウェーブの損傷もそう軽くはない。
しかし、彼の苛立ちの原因は痛みなどではなく、破壊された通信機にあるのかもしれなかった。
「コンドル達は?」
彼の一つ目が焦燥に揺れるのを眺め、サウンドウェーブは可能な限りの速度で身体を起こした。
自己回復のために幾つかの機能を一時的に切り離しているから、痛みを和らげるのと同時に動きも鈍くなっている。
上体を起こしたところで一息吐くと、焦れたレーザーウェーブに肩を掴まれた。
掴んだ、と言ってもその仕草は乱暴ではなく、サウンドウェーブに新たな痛みを生じさせることはなかった。
「メガトロン様と一緒だ」
「メガトロン様はご無事なんだろうな」
レーザーウェーブは肩を貸したまま行く方が早いと判断したらしい。
ぐいっと腕を引っ張られ、反対の手に腰を支えられて、サウンドウェーブはほとんど引き摺られるように歩き出した。
「大体は」
レーザーウェーブがスピードを速め、サウンドウェーブは小さく呻いた。
「誰がやられた?」
走っていると言った方が正確なくらいの速度でレーザーウェーブは進む。
本当は飛んでいきたいに違いないが、彼もそうしないのではなく、そうできないのだろう。
「残念ながらスタースクリームは無事だ」
「分断されたのは俺達二人だけってわけか」
レーザーウェーブが自嘲し、遠くへ目をやった。
その視線の先、ぽっかりと光を失っている幾つかの場所で先ほどまで戦闘が行われていた。
戦闘中に分断されたのはレーザーウェーブの言葉通り彼ら二人だけで、その時点でサウンドウェーブは既に手酷くやられていたから、実質的に戦えるのはレーザーウェーブだけだった。
サイバトロンが撤退を始めなければ、二人とも危うかったかもしれない。
前を睨みつけるようにしながら黙々と進んでいたレーザーウェーブがふと足を止めた。
「お迎えだ」
立ち止まった彼らを近付いてくる轟音が包む。
そして地面を駆けるごく小さな足音も聞きつけたサウンドウェーブはバイザーの奥で目を細めた。
どこかふて腐れたような顔でスタースクリームが一番に着地し、遅れてメガトロンが降り立つ。
「無事か」
「はい、メガトロン様」
ぴしりと姿勢を正したレーザーウェーブに支えられていた手を振り解かれ、サウンドウェーブはこの薄情者め、と顔を顰めた。
けれど、するりと足元にやってきて彼を支えた黒い影と、背中をこつりと支えた二つの嘴のお蔭で彼の渋面は長続きしなかった。
*2010/08/30