今日は非番だから、と久しぶりに朝寝坊した。
この後何をして過ごそうか。突然出撃命令がでて駆り出されない限り後は1日中自由だ。
サンダークラッカーは枕を抱えて欠伸混じりに考える。
いつも雑用だの戦闘だので何だかんだ忙しい時間をすごしているから、ぽっかりあいた時間は持て余し気味になってしまう。
娯楽といってもバーに行くか、休憩室に入り浸っているであろう仲間と喋るか、くらいしかこの基地では無い。
しばらく考えていたらまた眠くなってきたので、とりあえず何かしよう、と起きる事にした。このまま寝てしまっても良いけれどそれではなんだか勿体ない。
起き上がろうとしたら間抜けなことに転がり落ちた。がきんっと金属のぶつかる音。
いたい、と小さく呟いてそのまま膝を抱える。
なんだか動くのが億劫でしばらくその姿勢で天井を眺めたり、壁を見つめたりする。まだ頭が起きていないのかもしれない。
ぼーっとしていると自分がどんどん小さくなるように感じられて、こわいながらもその感覚に身を委ねる。
世界と自分の境界線があいまいになったとたん、とんとん、というノックの音で急に現実に引き戻された。
どうぞ、と言うのとほぼ同時にドアを開けて入ってきたのはスタースクリームだった。
座り込んでいるのを見て一瞬ぎょっとしたようだが、とことこ歩いてくると隣に腰を下ろす。疲れているらしく、ひどい顔をしている。
同じように膝を抱えて黙り込んでしまったので、軽く腕をつついて促す。口を開いたスタースクリームは本当に疲れているようで、酷い嗄れ声だ。
「お前今日非番だろ?俺も今メガトロンに休みをもらったんだ」
うん、と頷くと、どこかいかねぇの?と小さな声での質問の形をかりた催促。
「行きたいのか?」
聞き返すと、少し赤い顔で頷く。
「久しぶりに外に出たい。ずっとデータとにらめっこで…っ」
大方メガトロン様がこいつに休暇を与えたのも、煮詰まりすぎたこいつが騒ぎを起こす前にってことだろうな。
誰に強制されたわけでもないのに、たまにこんな風にデータをいじくり回してはパンクして暴れる。傍迷惑なサイクルだ。
自主的にやっているのだから好きなところで休憩でもなんでもとればいいのに、その加減が下手くそすぎる。
「スカイワープはどうした?」
立ち上がりながら聞くとスタースクリームが怪訝そうに見返してくる。
「行かないのかよ?」
苦笑しながら手を引っ張ると、ぱっと顔を輝かせた。
「スカイワープなら、さっきダージ達とバーに行くって言ってたぜ」
「いいんだろ、あいつらも一緒で」
こくこく素直に頷いたスタースクリームは早く早く、と無言で圧力を掛けてくる。
スタースクリームの言ったとおり、バーにはスカイワープはじめジェットロンが皆揃っていた。
だるそうにエネルゴンを飲んでいる姿はまさに不健康の塊。
朝っぱらから何してるんだか。
「なんだ戦闘か?」
スカイワープが面倒くさそうに言う。酔っている訳ではなさそうだがその態度は兵士としてどうなのか。
首を振ったスタースクリームにスラストが首を傾げる。
「じゃあどうしたんだよ」
飲みに来たのか?とエネルゴンを振ったのはどうやら酔っているらしい。
スタースクリームの口から遠出の誘いがでると、どんよりしていた顔が一斉に輝く。
暇を持て余しているくせに外に出るにはきっかけが必要と来てる。めんどくさいやつらだ、とサンダークラッカーは肩を竦めた。
ぞろぞろ連れ立ってハッチへと足早に歩きだす。自然にそのスピードは上がって終いには半ば駆け足で。
スタースクリームはトランスフォームしていきたいようだが、基本的に基地の廊下はロボットモードで、だ。
ジェットロン全員が音速でハッチまでいったら、それこそ基地がぶっ壊れる。
顔をぎらつかせたジェットロン達が廊下を行くのは奇妙な光景だった。
全員が無言で、半笑いのような薄気味悪い表情を浮かべて競争でもしているのかのように通り過ぎていく。
物音に顔を出したフレンジーはぎょっとしたようにそれを見送った。
真っ先に飛び出したスタースクリームはもう見えないほど遠くへ飛んでいった。
スラストは奇声をあげて旋回をしている。酔いは冷めていないようだ。
悠々と飛ぶラムジェットに、颯爽とアクロバットを決めるダージ。
スカイワープはスタースクリームを追いかけていったようで、遠くにぼんやりと2機が飛んでいるのが見える。
最後に空中に飛び込んだサンダークラッカーは沸々と湧いてくる衝動に身を任せた。
全身に力がみなぎってくるような心地良さ。
やはり自分も飛びたかったのだ。
この翼で空を切る気持ちよさと言ったら。
今日は非番で良かった。
1日中思いっ切り飛び回れる日なんて滅多にないんだから。
*2008/08/13 前ブログより転載・加筆修正
*2008/11/20 加筆修正