今日はまたやけに機嫌の良い、と思った途端、スラストが同じ疑問を口にする。
「ラムジェットの奴、今日はやたらと張り切ってないか?」
思うことは一緒か、と苦笑してダージは肩を竦めた。
ラムジェットはそれくらい活き活きして見える。
彼の全身に力がみなぎっているようで、程よく緊張した白いボディは実に凛々しかった。
おそらくスタースクリームが与えた簡潔な命令のお蔭だろうが、そこに至るまで強いられた長い退屈がその命令を一段と素晴らしいものにしていることは確かだ。
ダージとてスラストが引き起こした面倒からこっち延々と続いていたつまらない任務には辟易していた。
だがそれを口にすればスラストが落ち込むのは目に見えていたので、ダージはただ何でだろうな、と曖昧な答えを返すだけにした。
「さて、そろそろ行くか?」
ダージは離れたところにいるラムジェットにも聞こえるよう、少し声を大きくした。
今回の獲物を満足げに眺めていたラムジェットは、ダージの言葉にようやくか、と笑った。
「長いこと待たせてくれるぜ」
ちらりと見られてスラストはむっとした顔をした。
「根に持つなよ」
「持つさ。もう忘れてやるつもりだけどな。なあダージ?」
笑って同意すると、スラストは急に元気が出て来たようだった。
ラムジェットは充填を終えた銃を街へ向け、待ちきれない様子で言った。
「これ以上待つ必要はないだろう? お前がそう言っても俺は行くぞ」
「もう良い頃合だろう。ラムジェット、一番は譲ってやる」
「言われなくともそのつもりだ」
今回ばかりはスラストもラムジェットに最初の一撃を譲ることに何も言わなかった。
ラムジェットの腕から放たれた一撃は、闇を裂いて地上に激しい炎を吹き上げさせた。
三人はその炎が宙を焦がす前に、既に街へと迫っていた。
オートボット達の反撃は素早かったが、ようやく思う存分暴れることを許された彼らの前ではあまりにも弱々しい。
三機の息の揃った攻撃には無駄が無く、辺りを震わせるエンジン音の後には無慈悲な破壊が残るばかりだった。
「悪くないな」
トランスフォームしたラムジェットは満足そうに笑い、燃え盛る炎を目を細めて見つめた。
炎を受けて赤いボディをいよいよ赤く染めたスラストが同意の笑いを上げる。
ふいにラムジェットが顔を顰め、ダージを睨みつけた。
「あいつが来るぞ。お前知ってたか?」
何のことか一瞬わからなかったダージだったが、すぐにラムジェットの不満の理由はわかった。
笑いを収めたスラストも気付いたようだった。あれは間違いなくサンダークラッカーだ。
「知らん。スタースクリームは何も言ってなかったが」
ラムジェットは機嫌を損ねたように一瞬むっつりした顔をしたが、身体を掠めた地上からの攻撃でまた気分を変えたらしい。
「まあいいさ。あいつが来たところで何も残っちゃいない」
「言えてる」
スラストが言いながらオートボットを黙らせた。
ダージはラムジェットと顔を見合わせ、互いににやっと笑うとスラストに続いた。
サンダークラッカーが到着したのはそれから間もなくだったが、その頃までにはあらかた片が付いていた。
スラストはまだ地上近くで頑張っていたが、ダージは宙からの攻撃に切り替えていた。
「なんだ、もう終わってたか」
「あいにくだったな」
つまらなそうにサンダークラッカーがそう言うと、ラムジェットがその鋭い爪に獲物を引っ掛けたまま済まなそうな調子で言った。
「ちぇ、よく言うぜ」
呆れたように肩を竦めると、サンダークラッカーは下で手をふっているスラストにひらひらと手を振り返した。
2010/03/07