これ以上ないというくらい面倒くさそうに溜息をついてクランクケースが銃を持ち上げた。
彼の体格から言えばそう重いものではないだろうに、ひどく重いものでも持っているような足取り。
クランクケースがだらけた格好で座っていた時からずっと彼を眺めていたストッケードは、少し可笑しくなって肩を揺すった。
「んだよ」
気付かれぬよう笑ったつもりだったのに、クランクケースは仏頂面で振り向いた。
声を出すことすら面倒くさそうなのがいかにもクランクケースらしい。
「なんでもねえよ」
「なんでもねえことで俺の息を使わすんじゃねえよ、馬鹿野郎」
「人を罵るのに息使うのはいいのかよ」
答えはうるせえ、という思いがこれでもかと込められた一瞥だった。
ストッケードが肩を竦めると、その肩先にちょいと誰かの手が触れる。
「ったく、これから戦闘だってのに気分が下がる会話だな」
「なんだお前も行くのか?ハードトップ」
振り返って昔なじみのスナイパーを視界に入れる。銃を肩に軽く乗せているのがなんとも絵になる男だ。
クランクケースとは全く大違いだ。奴は空気の重さすら感じているんじゃないかと思うほど、手に何も無い時ですら大儀そうな顔をしている。
「もちろん。クランクケースが行くってのに俺が行かないんじゃなあ」
「どういう意味だ」
部屋の向こうからクランクケースが噛みつく。
「オートボットの奴らが寂しがるって意味だろ」
自分のでも他人のでも悪口には敏感な彼に、ストッケードは笑い混じりに返してやった。
「何言ってやがる」
結局また座り込んだクランクケースは背中を丸めて吐き捨て、乱暴に銃を投げ出す。大きな音にハードトップが振り返り、投げ出された銃を見て顔を歪めた。
「ああ!な…な、なにしてんだ、お前は…ああー!」
悲鳴を上げながら近寄るハードトップにクランクケースは馬鹿にしたような顔を向けた。
「なんだ喉でもいかれたのか? それとも頭の方か?」
「うるせえ馬鹿てめえどういう扱いしてんだ、ああ…ったく!」
他人の銃なのに動揺するハードトップが可笑しくてストッケードはまた少し笑ったが、笑い事じゃない、とハードトップに睨まれて真面目な顔を取り繕った。
*2010/02/22