今日も基地は平和だ。
翼持ち達が少し喧嘩しているくらいで、それならデストロンでは十分平和の内に入る。
ぴーちくぱーちく喧しい彼らを見ながらモーターマスターは欠伸を噛み殺した。
仲間内だから別段我慢する必要もないかもしれないが、目の前に座っているオンスロートの手前、緩みきった間抜け面を晒すのはみっともなくてあまりしたくない。
二人が顔を合わせるのは久方ぶりだった。
一緒にゆっくりエネルゴンを飲むとなると、もっと時間が開いている。
臨時基地暮らしも気兼ねをしなくて良い分楽ではあるけれど、やはり海底基地に帰ってくるのは良いものだ。
一時とはいえ、のんびりできる。どうでもいい話をだらだらとするのは楽しいし、喧嘩を眺めているのもなかなかのものだ。
部隊内の揉め事は直接自分に影響するが、そうでない者達が揉めているのは関係ないだけ存分に楽しめる。
オンスロートもおそらく同様だろう。意識の大半があちらへ向いているように見える。
エネルゴンを口へ運びながらモーターマスターはそっと笑った。
「お前のにやけ面を見ているだけでもこっちは腹が立つんだ、ぐちゃぐちゃ言わずに黙ってそこへ座ってろ!」
「それはこっちの台詞だ、スタースクリーム。役にも立たないことばかり言う口なら噤んでたほうが世のためだぜ」
「なにを?!」
「ああ?やるか?」
くっくっくっ、とオンスロートが肩を揺らし、モーターマスターもにやりと口を歪めた。
「あいつらは実に馬鹿だな。同じ顔して何を言ってるんだ」
潜めた声でオンスロートが言う。
「スカイワープの言うことには一理あるがな。スタースクリームは口を開いていない時の方が巧くやるようだ」
「全く。よくああもおかしなことばかり言えるよな」
二人は笑って、さらに熱を帯びてきたスタースクリームとスカイワープの言い合いを見守ることにした。
しかし、視線をやった瞬間彼らは同時に感嘆の声を上げることになる。
その原因は今まで黙って座っていたサンダークラッカーだった。
あまりに静かにしているものだから、すぐにはその存在に気付かないほどだったのに、彼が突然発砲した。
怒りも殺気も抜きに、ただ静かな仕草で腕を上げ二人の同型機の翼を鮮やかに撃ち抜く。
「うるさい」
同じ仕草で引っ繰り返ったスタースクリーム達に向けて、彼は淡々と言った。
熱くならないのがサンダークラッカーの慣れたところだ、とモーターマスターは感心した。
彼まで熱くなれば喧嘩はもっと大規模なものに発展しかねない。
だがモーターマスターの考えは少しばかり甘かったようだ。
「本当に馬鹿なやつらだ」
呆れたように笑いながら言ったオンスロートの方が事態をより正確に掴んでいた。
「なにしやがる!」
我に返ったスタースクリームの金切り声を皮切りに、スカイワープが喚き、サンダークラッカーが倒れ、滅茶苦茶に発射されたビームがそこら中を飛び回る。
「しょうがないな」
さっと身を屈めてビームを避けると、オンスロートが立ち上がった。
モーターマスターも苦笑しながらそれに続く。
その辺にしとけ、と忠告してやるオンスロートは実に出来ている、とモーターマスターは笑った。
オンスロートの相手がスタースクリームだからだろうか。
一応敬意を払っているのかもしれない。だが彼の相手はスカイワープなので、その必要は無いだろう。
「余計なことを!」
こいつらの口は揃いも揃って出来が悪いらしい……というとサンダークラッカーに悪いか。
引っ張り上げたスカイワープが藻掻くのをあしらいながら、モーターマスターはむっつりした顔のサンダークラッカーにウィンクを投げた。
*2010/01/12