スプリンガーは会議の進行を黙って見守っていた。
無作法でないくらいに椅子に身体を沈めた彼の注意のほとんどは、次々と的確な説明を添えて案件を出していく副官に向けられている。
その隣で何が楽しいんだかやたらとにこにこしている司令官のことは意識的に視界の外へやろうとしていたが、そう上手くもいかずに内心の苛立ちがつのるだけだ。
ウルトラマグナスを見る視線に余計な力がこもっているのに気が付いてスプリンガーは手近なモニターを眺めることにした。
そうしていればとりあえずはロディマスのことも意識の外へ出しておける。
子供じみた嫉妬だとわかっていたが、納得するまでには至っていない。
わかっているのに自分の感情をコントロールできないのは非常に不愉快だった。
かつてウルトラマグナスは確かに自分達の憧れであったはずだ。
勇気と力と優しさ、その他有能な指揮官として必要な諸々のものを備えて、ウルトラマグナスは最も信頼出来るサイバトロン戦士の一人だった。
いや、彼は今でも間違いなくそういう人物だ。
過去形で言ってしまうのは、やっぱりこの馬鹿げた嫉妬のせいなのだろうか。
思わずこぼれた舌打ちは存外に大きな音だったらしく、隣のパーセプターが怪訝そうな顔をした。
「どうした?」
「いや、ちょっと足をぶつけて」
それで十分だったのか、パーセプターはふうん、と言ったきり話し掛けては来ず自分の前のモニターとにらめっこを始めた。
横目でちらりと見て、それがどうやら彼自身の研究のことらしいのに気付くと、スプリンガーは"2名脱落"と苦笑混じりに考えた。
視線をウルトラマグナスに戻すと、会議はどうやら終わりに近付いているようだった。
「何か、質問は?」
一同を見回す視線がスプリンガーの上で止まる。
「いーや」
ひらひら手を振ると、ウルトラマグナスはでは、と司令官を振り返った。
頷いたロディマスを見てスプリンガーはまたちりっと胸が痛むのを感じた。
「では解散としよう。お疲れ様」
のんびりした声にがたがた椅子の鳴る音が続く。
同様に立ち上がったスプリンガーは、モニターの前で言葉を交わすプライムとマグナスを見つめてしばらくそこに立ち尽くしていた。
ほんの一瞬彼の顔に苦々しい表情が浮かび、何か言いたげに口が開いたがそこから言葉の発せられることはなかった。
やや乱暴に椅子を押してスプリンガーは部屋を出た。
"ホットロッド"がいないのに自分は未だ慣れずにいるのだ。
数段とばしで大人になってしまった彼は変わってないようでいてやっぱり変わっているし、
今のロディマスに必要なのは軽口を叩き合っていたずらなんか一緒にする友人でなく、頼りになる副官だということもわかっている。
自分もこんな馬鹿みたいな嫉妬なんかせずに彼を支えることに一生懸命になるべきだ。
それでも隣に彼がいるのがあんまりに自然だったから、隣がスースーしてたまらない。
早く慣れてしまえ。
ロディマスがあそこにいることにさっさと慣れろ。
強い調子で自分に言い、スプリンガーは殴るようにパネルを叩いて自室へ入った。
苛立ちにまかせてすらりと抜いた剣を二三度振り下ろして、溜息をついてベッドに腰を下ろす。
ふと覗き込んだ刃に映った自分に、スプリンガーは忌々しげな舌打ちをした。
*2009/07/16