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「おいジョルト」
データ解析にいそしんでいたデッドエンドは掛けられた声に嫌な顔をした。
「おい。無視か?」
「スィンドル、言っただろ」
ったく馬鹿が…と呟いて振り返ると、スィンドルは大袈裟に目を瞬かせた。
「聞こえてんぞ、デッドエンド」
言ってデッドエンドの苦虫を噛み潰したような顔を笑う。
投げつけたファイルを軽く避けたのもデッドエンドの気に障った。
「聞こえるように言ってんだよ馬鹿野郎。昔の名前は呼ぶなっつったろ」
散らばったファイルを拾い上げてぱらぱら捲りながら、スィンドルは肩を竦めた。
「言葉遣いに気を付けろよ、クソガキ」
「おい!」
「頼む時は"お願いします"だ」
噛みついた途端ぽこっとファイルで頭を叩かれる。
痛くは無かったが、無性に腹が立つ。
だって相手はスィンドルだ。イコール、腹を立てても仕方ない、ということでもあるのだが。
「先輩に対する口の利き方は教わったろ」
にんまり笑うのが心底鬱陶しい。
笑い話はあっという間に広がるこの組織の構造を怨むべきだろうか。
人付き合いを嫌う、と認識していたようなやつまでこの話を知っていて、しかも事ある毎に皆が引き合いに出すのだから始末が悪い。
俺がひねくれても当然だ、とデッドエンドが膨れたところでファイルをデスクに放り投げてスィンドルが隣へ座った。
「でな、ジョルト」
デッドエンドはもう諦め、黙って頷いた。
「仕事か?」
「ああ。良かったな、あいつに会えるかもわからんぜ」
「何…?」
スィンドルが楽しそうにキーを叩くと、モニターに現れた顔にデッドエンドは溜息をついた。
「バリケードか。生きてたんだっけな」
「あんまり嬉しくなさそうだな。もっと喜ぶかと思った」
残念そうに聞こえるが、スィンドルは悪戯っぽく目を輝かせているので大してそう思っている風には見えなかった。
彼の思っていた通りの反応を返してしまった自分が恨めしい。
「他のやつらも行くんだな。て、ことはお前と組まなくてもいいのか?」
期待を込めて尋ねたが、スィンドルの目を見た瞬間デッドエンドは悟った。
「おいおいそんな悲しそうに言われるとまいるなぁ、喜べもちろん俺とだ」
「やっぱり…」
むしろお前としか組めないことが悲しい、なんて言ったところで時間の無駄なのはわかっていても、デッドエンドは言い返さずには居られなかった。
*2009/07/01