ランドマインは銃を下ろして肩の力を抜くと、額の汗を拭うような仕種をした。
それはトランスフォーマーである彼には不要なものであったが、人間達の中にいるうちに習慣となってしまったものだった。
「お疲れさん」
足元で今日のパートナーがにっこり笑う。
頷くと彼は続けて言った。
「悪いが、また頼む」
「了解。見つけたら一緒に帰る」
「そうしてくれ。じゃあ」
パートナーが他の者達と去っていくとランドマインはトランスフォームして走り出した。
レッケージはすぐに見つかった。
というより、あちらがこちらに気が付いた、というほうが正しいかもしれない。
歩いてきたレッケージにランドマインが駆け寄ると彼は小さく頷いた。
それだけ。
レッケージはほとんど話さない。
ランドマインの知っているのは彼の名前くらいなもので、他に知っていることは少ない。
彼が本当はディセプティコンなのだとか、ここにいるのは秘密なのだとか……。
その理由は知らない。教えてもらえない。本人からも、人間達からも。
ランドマインが見上げると、レッケージは赤い目で見返してきた。
冷たくて暗い目。
「演習には来ないの?」
何か言おうと思ってぽろりと口から零れたのは、そんな言葉で。
もっと気の利いた事を…と内心慌てたランドマインにレッケージは微かに笑った。
「俺達に演習など必要ない」
笑った、のだと思う。
周りにいる人達の見せる笑いとは随分違うものだったが、ランドマインはそれを笑いと認識した。
むっつりと押し黙っていることの多い彼の顔を一瞬歪めたそれをまじまじと見つめた後、そっとメモリに保存して、それから彼は尋ねた。
「俺達って?」
すっとレッケージの目が細くなった。
刺すような赤い光にランドマインは知らず身を縮めた。
「俺には、だ」
吐き捨てるように言ってレッケージは殺気の篭もった視線を空へ投げた。
同時にしゅっと鋭い音がして彼の武器が展開した。
「レッケージ!」
ランドマインが叫んだ。
赤い剣が一際強く輝いたかと思うと、瞬間レッケージが崩れ落ちたからだ。
「くそ…」
倒れたレッケージが呻いた。
彼の周りに満ちていた殺気が一層濃度を増すのがわかって、ランドマインは銃に手を伸ばした。
ゆっくり起き上がって膝をついたレッケージがそれを見て口を歪めた。
「そうだ、銃を取れ、オートボット。せいぜい今のうちに撃っておくがいい」
基地の明かりをうけてレッケージのエンブレムがぎらりと光る。
武器を持たぬというのにレッケージは危険だと本能が叫ぶ。
それでもランドマインは撃てなかった。
レッケージが声を上げて笑い、立ち上がった。
もう一度空を見上げ、彼は何か呟いた。
次に視線を戻した時にはその殺気は消えていて、レッケージは軽く首を振ってランドマインを促した。
「行くぞオートボット」
すたすた歩き出した彼をランドマインは小走りに追う。
「ランドマイン」
言うとレッケージが振り返った。
「ランドマイン、オートボットじゃなく」
「知っている」
「え?」
聞き返してもレッケージはもう何も話さなかった。
*2009/06/22