「全く嫌な天気だぜ」
溜息をついたところで隣からの視線に気が付いてサンダークラッカーは苦笑した。
「そりゃあ海の底にいりゃあ関係はないかもしれないけどよ…晴れの日の方がモニターを 眺めるのも楽しいってもんだろ?」
無言で作業に戻ったサウンドウェーブは今の説明に納得したのか、それとも元々聞いてもいないのか。
モニターを海底基地周辺カメラに切り替えると、伸びをしながらふと思い付いてサウンドウェーブに尋ねてみる。
「なあ虹、見たことあるか?」
数秒待っても返事は返ってこない。
どうやら自分はさっぱり相手にされていないらしい。
そう結論付けてサンダークラッカーは口を閉じた。
沈黙。
…居心地悪いことこの上ない。
サウンドウェーブ相手に延々と演説をぶちかますスタースクリームはやはり普通ではないらしい。
俺にはとても真似できないな、と溜息をついてがちゃがちゃモニターを弄る。
異常なし異常なし異常なし。
どのカメラもいつもと変わらない景色を映しているだけ。
地上はまだ雨が降っているようだ。
ただでさえ息がつまりそうなこの海底基地で、サウンドウェーブと一緒のモニタールームは本当に窒息しそうになる。
仕事が終わったら絶対外に行く。
雨が降ってようが槍が降ってようが構うものか。
絶対に、出掛けてやる。
固く誓ったところでまた隣からの視線に気付く。
顔を向けてもサウンドウェーブはサンダークラッカーを見つめたまま何も言わない。
「……どうしたんだよ」
ただこちらを見ているだけなのか、ブレインスキャンでもかけられているのか。
サウンドウェーブは本当に読めない。
何をしているのか推し量ろうとしても考えつく可能性はいつも複数で、しかも答えはわからないときてる。
彼が何を考え何をするのか。もしかしたらメガトロンすら知らないのかもしれない。
考えているうちになんだか怖くなってきてサンダークラッカーは早く何か言ってくれ、と半ば祈るような気持ちでサウンドウェーブを見た。
「虹なら見たことはある」
「あ…そうか……えーと、綺麗だよな」
ぎこちなく笑うとサウンドウェーブは僅かに首を傾げた。
「綺麗?ただの大気光学現象だ」
「たいきこうがく…?」
繰り返してもなんのことだかさっぱりだ。
虹を見てもサウンドウェーブはその大気なんたら現象だと思うだけで特になんとも思わないんだろうか。
もう興味を失ったように作業を再開しているのを眺めていたら、サンダークラッカーは急にサウンドウェーブが可哀相になってきた。
雨が上がったら一人で飛ぶ楽しみをすこし我慢してこの男と一緒に出掛けよう。
多分とても居心地悪い道行きになるだろうけど、空に出た虹の正しい楽しみ方を教えてやらないといけない。
余計なお世話?そんなことしるか。
*2009/01/31