midair





「だから寝るなって言ってんだろ!」
「げふぅっ」
 スパークすれすれを抉られてブリッツウィングは飛び起きた。
「いってぇ!酷い!」
「ああ?お前が悪いんだろ。それよか、飲め飲め」
 ほら、と渡されたオイルと自分の腹を見比べる。
 不思議そうに瞬きしてブリッツウィングは穴の空いていたはずの腹をさすった。
「綺麗になってやんの」
「当たり前だろ」
 馬鹿にしたように鼻をならしてグレンはそれより早く飲め、とばかりにオイルを突きつける。
「塞がっちゃいるがオイルは無くしすぎだ。ここではこれくらいしか補給でき…っておい!」
 オイルを飲み干したブリッツウィングはすっくと立ち上がった。
「ありがとよグレン」
 にっと笑ったブリッツウィングの手にはもう銃が握られている。
「エネルギー不足で倒れるぞ」
「その時はその時で」
 はあ…と溜息をついてグレンは首を振った。
「お前ってほんと馬鹿だよな」
 いつもなら怒るのにすでに戦いのことで頭がいっぱいなブリッツウィングの耳にグレンの声は届かなかった。

「楽しそうだな、俺も混ぜろよ」

 その声にミニボット達は舌打ちをし、彼らと向かいあっていたアストロトレインは吃驚した顔をする。
「ブリッツウィング?!…なんだよ、もういいのか?」
「おーグレンのお蔭でな」
 ぐるぐる肩を回してみせるブリッツウィングにアストロトレインはほっとしたような怒ったような微妙な表情を浮かべた。
「ったく心配して損したぜ」
 てめえはほんと…とぼやく。
 二人のトリプルチェンジャーに無視される形になってゴングは呆れたように肩を竦めた。


「うお…っと?」
 アストロトレインと背中合わせで戦っていたブリッツウィングはふらりと蹌踉けて首を傾げた。
「どうした」
 ちらりと視線を寄越してアストロトレインが尋ねる。
 まだ戦闘は続いていた。
 サイバトロン、デストロン共に一歩も譲らない。
 デストロンに襲われた工場はもうすでに更地へと姿を変えようとしていた。
「…っておい!」
 ぐらりとブリッツウィングが倒れた。
 慌てて駆け寄ったアストロトレインに抱き起こされてブリッツウィングは不機嫌に唸った。
「これからいいとこだってのによぉ」
「…エネルギー切れか?」
 ブリッツウィングがむっつり頷く。
 ふ、と苦笑してアストロトレインはブリッツウィングをそっと寝かせた。
「ま、俺の戦いっぷりを見物してろ」
「くそー見せつけやがって!」
 覚えてろ、と喚くブリッツウィングに機嫌良く手を振るとアストロトレインはサイバトロンに向き直った。

 グレンの復帰でデバステーターとなったビルドロン達が加わり戦況はデストロンに有利になりつつあった。
「スペリオン、行け!」
 コンボイの声が響くまでは。
 スペリオンの登場にサイバトロンが一気に盛り返す。
「おーい押されてんじゃねぇか」
「うるせぇ!」
 ちゃかすようなブリッツウィングの声に怒鳴り返してアストロトレインは舌打ちをした。
 ちょろちょろうるさいサイバトロンどもめ。
 とびついてきた小さいのを放り投げて息をつく。
「何が見てろだ、格好つけやがって」
 寝転がったままブリッツウィングが嘲笑う。
 かっと頭に血が上ったアストロトレインはサイバトロンのことを忘れてブリッツウィングに噛みつきかけた。

「デストロン軍団退却!」
 それを聞いてにやりとアストロトレインの顔が歪む。
「おーブリッツウィングよ、てめえ動けないよな?どうする、頭さげたら乗せてってやらないこともないぜ?」
「誰が頭下げるか!この機関車野郎!」
 むっとしてブリッツウィングは言い返す。
「ほーうじゃあ一人で帰れんのか?」
 アストロトレインの表情に苛々しながら頷くとブリッツウィングはなんとか身体を起こそうともがき始めた。
「…降参か?」
 しばらく頑張った後、結局諦めて地面に顔を埋めたブリッツウィングにアストロトレインが言った。
 にんまりと浮かぶ満面の笑みを睨みつけてブリッツウィングは頷いた。
「エネルギーさえ切れてなけりゃ…」
「ふん、大体サイバトロンなんかの弾を喰らうのが悪いんだ」
 ブリッツウィングを担ぎ上げて、アストロトレインは思い出したように苦い顔をする。「仕方ねぇだろ…」
 好きで喰らったんじゃねぇっての、と言い返したブリッツウィングはくすりと笑った。
「"死んだら許さねぇ"だってよ」
「…死んだらよかったのにな、お前」
「あ、そんなこと言うのか?アストロトレイン」
 返事をせずにトランスフォームしてブリッツウィングを乱暴に乱暴に放り込むとアストロトレインは飛び立った。


「…ほんとに俺が死んでたらどうしてた?」
 冷たい床に頬を押し付けながらぽつりとブリッツウィングが尋ねた。
「死んでないんだからいいだろ」
 ぶっきらぼうな返事をした後不満そうな雰囲気を感じたのか、アストロトレインは小さな声で言い足す。
「お前が死ななくて良かった」
 アストロトレインの顔が見えないことにブリッツウィングはちょっと感謝した。
 動けない今は赤くなった顔を手で隠す事もできやしない。
「恥ずかしい奴…」
「ああ?何だ?」
「何でもない!」
 着陸態勢に入ったアストロトレインにブリッツウィングは大声で怒鳴り返した。




*2008/12/31