近付いてきた足音にブラックアウトは振り返らずに空になったグラスをぶん投げた。
「うおっ危ねぇな」
床に落ちたグラスの割れる音と共にフレンジーが肩に飛び乗ってくる。
それをうるさそうにはね除けながらブラックアウトは隣に腰を下ろしたバリケードを睨みつけた。
「今日もご機嫌だな」
にやりと笑ってバリケードはブラックアウトの前に新しいグラスを置く。
「何か用か」
警戒するようにフレンジーの注ぐエネルゴンを眺めながらブラックアウトが尋ねた。
バリケードにつつかれてフレンジーが肩を竦める。
「俺は別にお前に用なんてないね。バリケードが面白いからついて来いって言っただけだ」
そうだろ、とバリケードを見上げてフレンジーが笑う。
肩を竦めたバリケードはブラックアウトの不機嫌な顔に笑みを深くした。
「なに、独りで飲んでるお前の相手でもしてやろうと思ってな」
「結構だ」
唸るように言ってブラックアウトは一つ席をずらした。
「メガトロン様に言われた」
「…!」
とたんに顔をあげたブラックアウトをバリケードは満面の笑みで見る。
「嘘だ」
「死ね」
吐き捨ててエネルゴンを呷るとブラックアウトは苛々と机を叩いた。
「新入りがそんなに気にくわないのかよ?」
フレンジーが振ってきたブラックアウトの拳をひょいと避けながら言った。
返事は無いが逃げ回るフレンジーを本気になって掴まえようとする腕が物語っている。
バリケードは止めもせず、火に油を注ぐような言葉を呟いた。
「メガトロン様も気に入っているようだからな」
だん、と机を叩いてブラックアウトはバリケードを睨んだ。
「何が言いたい」
「お前がインシネレーターを目の敵にしてるってこった。つまり、インシネレーターにし…」
バリケードの後ろの壁が吹き飛んだ。
眉一つ動かさずにバリケードは首を傾げる。
「ああ、ブラックアウトが一介の兵士如きに関心を持つはずがないか?」
避難していたフレンジーがバリケードの背中によじ登りながら笑った。
「兵士、じゃないだろ今は」
「ん?ああそうだな」
顔を見合わせて笑う二人にブラックアウトは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「結構面白いやつだぜ?お前と同じで」
フレンジーがブラックアウトを苛立たせる調子で笑う。
「お前より素直で可愛いしな」
バリケードが付け加える。
「ブラックアウトだってこれで結構可愛いところあるぜ?」
言いながらげらげら笑いころげるフレンジーを殴り飛ばしてブラックアウトは席を立った。
ブラックアウトを見上げてバリケードは大真面目な調子で声を掛けた。
「俺も時々そう思う」
押さえきれない殺気を後に振りまきながら出て行くブラックアウトを見送ってバリケードは笑い声を上げた。
「そういうところが可愛くてたまんないぜ、なあフレンジー?」
「笑ってないでちょっと手貸せよな」
壁にめり込んだ身体をどうにか引き抜こうと藻掻きながらフレンジーがぼやいた。
*2008/12/21