たまたま通りかかっただけなのに、廊下でジェットロンたちの喧嘩に巻き込まれて凹んだ翼を撫でて溜息を一つ。
喧嘩を乱闘に発展させたのを棚に上げてアストロトレインはなんで俺が、と嘆きながら部屋に入った。
まぁいいさ、凹みくらいなら簡単なリペアで済む。
そう言い聞かせてエネルゴンでも飲むことにした。それに、オクトーンに頼んでたディスクが届いてたんだったな。
それでも見よう、と引き出しを開けて凍りつく。
ディスクが無い。
確かにこの引き出しにしまったのに、影も形もない。
しばらくあちこち見たもののディスクは結局見つからなかった。
溜め息を吐いて椅子に崩れ落ちたアストロトレインはエネルゴンを飲む気力もなくして机に突っ伏した。
やってられるか。不貞寝してやる、と眠りかけたところで通信が入った。
ブリッツウィングのやかましい声が飛び込んできてアストロトレインは思いっ切り顔を顰めた。
集音器に近すぎて声が割れているので何を言っているのかさっぱり分からない。
どうせどうでもいい話に決まっている。付き合うだけ時間の無駄だ。
うるせぇ!と怒鳴り返すと乱暴に通信を切った。
寝直そう、とベッドに向かいながら念のため通信機を落とす。
ごろりと寝転がったものの眠気は先の通信のせいで八割方吹っ飛んでしまい、またディスクの行方が気になりだした。
全く思い出せないことに苛立ちながらごろごろ転がっていると、扉が勢いよく開いた。 開けたのは誰かわかっているのであえて振り向かずにいると、怒った声が近づいてくる。
「お前通信きりやがったな!ご丁寧に電源まで落としやがって!信じらんねぇ、俺がせっかく繋いでやったのによ!」
ああうるさい。
しっし、と手を振って出て行けと促す。
ふんと鼻を鳴らしてブリッツウィングはどすんとベッドの端に腰を下ろした。
しばらくお互い不機嫌に黙り込んでいたものの、ブリッツウィングが沈黙を破った。
「そうだ、これお前のところから借りたんだけどよぉ」
今度は何を持って行ったんだ、と見上げて固まる。
「お、おまえ、それ…!」
「これ色んな星の女どもがでてくるんだけど、どれもこれもひでぇのなんの!化け物みたいなやつばっかり。面白すぎてナ二するどころじゃねぇんだよ」
思い出して吹き出しているブリッツウィングを思いっきり殴る。
「ふざけんな、てめぇ!何で俺のディスク持ってるんだよ!」
「何で、って取ったからにきまってるだろ」
馬鹿か、と言うような顔で見返してくる。
「馬鹿はてめえだ!勝手に取るなっていってんだろうが!!俺が楽しみにしてたのに…!」
「…え、お前こんなのまじめに見ようとしてたのか?趣味悪いな…」
憐れむような顔に苛立ってアストロトレインは手を突き出した。
「お前に言われる筋合いはねぇ!さっさと返せ!」
放られたディスクをつかむと、引き出しに放り込み勢いよく閉める。
「今度勝手に人のディスク触ったらぶっ殺すからな!?」
「言われなくてもそんな悪趣味なの見ねぇよ」
全く反省の色を見せないブリッツウィングに頭に音を立ててオイルが上っていく。
怒りに震えているアストロトレインをのんびりと見て、ブリッツウィングはふと気が付いたように翼を指差した。
「なんだよ、アストロトレイン怪我してんじゃねぇか」
心配でもしてくれるのかと思いきや、「ホントに馬鹿だな」と続けたブリッツウィングに、ぶちっとどこかの切れる音がした。
*2008/09/01 前ブログより転載・加筆修正
*2008/11/22 加筆修正