ごそごそとボンブシェルは脱出用ポッド兼今の住み家の穴蔵から這い出して、ロボットモードにトランスフォームした。
昨日の夜雨が降ったらしく、辺りは湿っていて独特の匂いに包まれている。その匂いを胸一杯に吸い込むと急に空腹を覚えた。
どうするかな、と辺りを見渡した時中途半端に囓られた木を見つけた。
住み家を隠すために回りの木はなるべく喰わないようにしよう、といつも言っているのに、忘れた馬鹿がいるらしい。
まぁ、全部喰ってないだけいいか、と溜息をついてボンブシェルは少し離れた場所にうずくまっている影に近付いた。穴の方からはキックバックが壁を蹴っている音がするので、影はシャープネルらしい。
こんな早くに起きるなんてめずらしいこともあるものだ。
ぱちっぱちっという音に一体なんだ、と覗き込むとシャープネルは手から電気をだして遊んでいるようだった。
「なにしてるんだ、こんな早くから」
尋ねると、「んー」と振り向くこともなく気のない返事が返ってくる。
しばらく見ていると、器用なことに電気でクワガタの形をつくったりしている。
そんなものを見ていても時間の無駄なので、餌でも探しに行くか、と向きをかえると手を振って電気を払ったシャープネルが追いかけてきた。
「昨日、雨降ってきたと思ったら雷がなりだしたから起きたんだよ。それからずっと起きてた」
「雷を浴びて元気ってわけか。単純だな、お前」
気のせいか身体全体がつやつやしてないか?
こっちは腹が減ってるのに、と不機嫌に返すとシャープネルは気にした様子もなく上機嫌で笑う。
「苛々すんなよ」
もう返事をするのも面倒くさくなって何を食べようかと考え始める。
この辺の畑や森はこないだ食べてしまったから、今日は少し遠出しないといけないかもしれない。久しぶりに街でも襲おうか?
「そういや、昨日の夜タンカーが港に入ってたぜ?」
襲撃作戦を練っていたら、能天気な声。
「喰いに行く?」
何でもっと早く言わないんだ。
罵倒してやろうと向き直ったが、機嫌良さそうにぱちぱちやっているシャープネルに溜息しかでない。
「キックバックを起こしてこいよ」
投げやりに言って軽く肩を回す。
寝ぼけたあいつに蹴られて少しはしゃんとすればいい。浮かれているシャープネルはかなり気に障る。
苛々とストレッチしながら待っていると「ぎゃあああ」というシャープネルの叫びとキックバックの唸り声が聞こえてきた。
眼をこすりながら出てきたキックバックは少し焦げているようだし、シャープネルは腹をさすっている。
今日も良い蹴りをもらったようだ。
「おい、いくぞ」
呼びかけ、一足先にトランスフォームして飛び立つ。
隣に並んだキックバックは、まだ眠そうに欠伸をしながらぶつくさ文句を言っている。
一方腹を蹴られたくせに、シャープネルは相変わらず鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌で鬱陶しい。
まぁ、シャープネルほどでは無いにしろ、俺も気分は良い方だ。キックバックの機嫌もすぐ良くなるだろう。
雨のすっかり去ったこんな良い天気の日にそうそう臍は曲げていられない。
全く今日は絶好のオイルびよりだ、と晴れた空を飛びながら満足げにボンブシェルは頷いた。
腹一杯いただくとしよう。
*2008/08/13 前ブログより転載・加筆修正
*2008/11/20 加筆修正