midair





叩き付けるように置かれたグラスにスカイワープは顔を顰めた。
「乱暴だな」
少し零れた水を指で拭う。
グラスを置いた人物、スタースクリームは眉を吊り上げた。
「お前に配慮が必要か?」
馬鹿にしたように言って手を振る。
良いから飲め、という事だろう。

喉を滑り落ちていく冷たさに頭が痺れる。
置いたグラスの中でからりと氷が回った。
崩れた透明な塊を眺めながらスカイワープは恨めしげにスタースクリームを見た。

「なんで水なんだよ。お前だけエネルゴンで俺は水って…」
「本当にわかってないなら救い難い馬鹿だな」
スタースクリームが鼻をならす。
消えていくエネルゴンを羨ましそうに眺めてスカイワープは溜息をついた。
「わかってるよ反省してるっての、航空参謀殿」
「そうか?」
頷いてスタースクリームは微笑した。
「じゃああの時の行動の問題点を纏めろ。反省もな。今すぐ」


うんうん唸るスカイワープをテーブル越しに眺めながらスタースクリームは機嫌良くエネルゴンを飲んでいた。
「ちぇっ、お前どっか行ってろよ、集中出来ないだろ?」
「俺が席を外してみろ、お前はどこ行くんだ?スカイワープ」
ぶすっと唇を突き出してスカイワープはくるくるペンを回した。
「くそーたかが苺だろ?!」
「ああ、たかが苺だな、デコレーション用の」
スタースクリームはたんたん、と机を叩いてスカイワープに続けるよう促す。
「怨むならメガトロンか自分の間抜けさを怨め」
「くそ、お前だって管理責任とかあるんじゃないのかよ?」
言われて少し考えた後、スタースクリームは身を乗り出した。
「いいぜ別に訴えてみても。…俺に勝てるなら、の話だが」
何か言い返そうとしてみたものの結局諦めてスカイワープは大人しく始末書に戻る事にした。


ノックとともに扉が開いてサンダークラッカーが顔を出した。
「スタースクリーム、手に入れた」
つきだした手に握られている袋の中には真っ赤なものがたくさん。
スカイワープを一瞥してからスタースクリームは立ち上がった。
「よし、いいぞサンダークラッカー」
袋を覗き込んでスタースクリームはサンダークラッカーを褒めた。
サンダークラッカーは肩を竦めて照れくさそうに笑う。
「で、次はどうするんだ?」
尋ねられてスタースクリームは時間を確かめる。
「そろそろ焼き上がるな…そしたら飾り付けだ」
「ケーキは誰が?」
「ビルドロンがやってる。おい、スカイワープもう終わったか?」
顰めっ面で顔をあげたスカイワープは首を振る。
「そんなに早く終わるかっての」
「明日までにやっとけ。今はもういい」
さっと手を振るとスタースクリームは部屋を出た。
「それより準備だ」
ひゅう、と口笛を吹いて立ち上がるとスカイワープはサンダークラッカーの後に続く。
「スタースクリームのやつ、機嫌良いな」
振り返って小声で言うサンダークラッカーにスカイワープはにやりと笑った。
「さっきまでは酷かったぜ。お前が苺持ってきたからだ」
「甘いもの好きだからなぁ」
サンダークラッカーは苦笑すると大分先を行くスタースクリームに追いつく為に足を速めた。




*2008/12/22
*2012/06/11 ブログから転載、加筆修正