幾度も試した後でセンサーが働かないのをしぶしぶ受け入れる。
弱ったな、と周りを見回すが仲間の姿は見当たらない。
「完全にはぐれたみてえだな」
戻ってきたカリバーストが首を振る。
「センサーがやられた」
「まじかよ」
顔をしかめたカリバーストは足を引きずっている。
「俺達置いてかれた?」
「わからん。こちらからの通信は届いているはずなんだが…」
「どうすんだよ!」
「知るか!とにかくがたがた喚くな」
怒鳴りつけてカリバーストを肩に放り上げる。
とりあえず黙ったカリバーストに溜息を吐いて辺りを見渡す。
貧弱な星だ。
砂地に岩と僅かな草が生えている以外、見える範囲にはなにもない。
少なくとも表面上は。
「ったく、なんてこった」
これだから未開の惑星なんていやなんだ。
降り立ってしばらくは良かったが、突然巨大な生物が現れてその混乱の中で仲間と分断されてしまった。
気色悪い触手に掴まれたカリバーストを助けに行ったら肩を貫かれて、センサーがやられたというわけだ。
お蔭で敵の接近も味方の接近も知る事は出来ない。
現在地さえさっぱりだ。
通信をやられなかったのは助かったが、連絡が帰ってこないところをみると壊れてしまっているのかもしれない。
「あいつら、なんなんだろうな」
少し弱気な声を出すカリバーストに鼻を鳴らす。
「でかいだけの下等生物だろ。不意打ちさえ喰らわなきゃ…」
言い掛けた時目の前の砂が凄まじい勢いで膨れ上がった。
舌打ちして飛び上がると追い掛けるように触手が伸びてくる。
触手をかいくぐってトランスフォームし、本体目掛けて連射する。
ぴぎゃぁあと鳴き声を上げて身体をくねらせ地中へ逃れようとした化け物を、逃がしてなるか、と深追いしたのがいけなかった。
「スラッグスリンガー!」
カリバーストが悲鳴を上げたが、自分では制御できず地上に叩き付けられる。
息を詰まらせたスラッグスリンガーにカリバーストが駆け寄った時にはすでに化け物は地中へ消えた後だった。
「大丈夫か?!」
呻き声を上げるスラッグスリンガーの腹に開いた穴に息を呑む。
最後のあがきか、装甲を抉られそこからオイルと循環液がどくどくと溢れ、傷付いたケーブルが火花を散らしている。
荒い息をつくスラッグスリンガーは自分の状況を把握出来ていないようだ。
痛みに顔を顰めて身体を起こそうとするが、力が入らず戸惑った声を上げる。
「動くなって!」
泣きそうな声で押し止めるカリバーストを見上げてスラッグスリンガーは溜息をついた。
「カリバースト」
少し擦れた声で呼ばれて顔を寄せると、震える手にぎゅっと抱き寄せられる。
「防御システムが完全にいかれたから、俺はもうだめだ。もう一度あの化け物が来たら、すぐ逃げろ。お前の退路を確保するくらいの時間は稼げる」
わかったな、と念を押されてカリバーストは唇を噛んだ。
「…」
「カリバースト」
「…わかった」
よし、と背中を軽く叩かれて泣きそうになった。
スラッグスリンガーの言う通り防御システムは沈黙し自己回復も始まっていない。
なにもできない自分を呪う。 せめて、せめてこんなに小さい身体でなければ、
ごごご、と砂煙を上げながら近付いてくる物体に身体を硬くする。
背後でスラッグスリンガーが切れ切れに息を吐きながらなんとか起き上がろうとするのを感じて振り向こうとした時。
「…ぉーい、大丈夫かぁー」
「助かったな、」
聞こえてきた声に崩れそうになった小さな身体を受けとめてスラッグスリンガーは安堵の息をついた。
飛んできたトリガーハッピーとミスファイヤーがスラッグスリンガーを担ぎ上げる。
「まったひどくやられたもんだなぁ」
「あんなやつ相手になにやってんだよ」
「うっせぇ、油断したんだ」
二人の言葉に言い返して、スラッグスリンガーは安心したように笑いを浮かべた。
「よかったぜ、見捨てられたかと思った」
「ガルバトロン様に感謝しろよ、あとサイクロナスにもな」
「サイクロナス?あいつが?」
「珍しく、な。こんなとこで失うのは惜しいってよ」
はは、と乾いた笑いを上げてスラッグスリンガーは少し後ろを俯きがちに歩いているカリバーストを見やった。
スコーピオン内のリペアルームに運び込まれて、治療を受けたスラッグスリンガーは部屋の外で待っていたカリバーストを優しく肩に乗せてコントロールルームに向かった。
「良かったぜ、死ななくてよ」
カリバーストの声が少し震えているのに気付かないふりをして、ただ頷く。
「お前が死んだらどうしようかと思った」
呟かれた言葉に頬を緩める。
ぽん、と宥めるように足を叩くと、溜息をついてカリバーストはスラッグスリンガーの頭にしがみついた。
*2008/10/17
*2012/06/11 ブログから転載、加筆修正