予定より大分遅くなってしまった。
輸送機のエンジンが言うことを聞かず危うく宇宙のど真ん中で立ち往生するところだったのだ。
とりあえず、無事にエネルギーを確保することはできたからガルバトロンもそんなには怒らないだろう。
というか怒らないでほしい、と思いながらオクトーンは疲れた足を引きずってガルバトロンのもとに向かった。
予想に反してガルバトロンは機嫌が良く、温かいねぎらいの言葉までかけられた。
隅に控えるサイクロナスが妙にぼろぼろなのはみなかったことにした。
予定どおりに帰還出来ていればブリッツウィング達と話でもしたかったが、この時間ではもう休んでいるだろう。
俺も一眠りするかな、と強張った肩を軽く回して欠伸した。
「ずいぶんかかったな」
部屋に入るなり声をかけられびっくりする。
「アストロトレイン?なんだ、どうしたんだよ」
「なんとなく、な」
ディスクでも見に来たのかと思ったがそういう訳でもないらしい。
いつも浮かぶ余裕の色が今日はなく焦燥と陰りが顔を覆っているのに気づいて首を傾げる。
「なんかあったのか」
答えずにアストロトレインは苦笑いを浮かべた。
「お前は察しがいいよな」
溜め息とともに立ち上がって近づいてくる。
「おい、何してんだよ」
ベッドに突き飛ばすように押し倒されて抗議の声を上げる。
「帰ってきたばっかなんだぞ、随分な歓迎だな」
呆れて見上げると虚ろな目が見返してきた。
「アストロトレ、」
一体どうしたんだ、と尋ねようとした言葉はふってきた口づけに遮られる。
「シャレになんねぇぞ、なんだってんだ」
驚いて押しのけるとアストロトレインは自嘲的な笑いを浮かべ、辛そうに顔をゆがめた。
「何のつもりだ。冗談でもブリッツウィングが知ったら悲しむぞ」
「あいつは気づきゃしねぇよ。いつだってそうだ、肝心なことは何もわかってねぇ」
嘲笑うように吐き捨て、「こっちの気もしらねぇで、な」と小さく付け加えた。
励ましの言葉など持ち合わせていないから、無言で布団に潜り込んだ。
「俺は寝るぞ。落ち着いたら出てけ」
「つめてぇなぁ」
どすん、と腹の上に倒れ込んだアストロトレインは天井を眺めながらオクトーンに話しかけた。
「なぁ、」
「んだよ」
「お前が好きだ、つったらどうする」
「…は?頭沸いてんのか?」
「茶化すなよ」
「もしお前が本気だとしても俺は絶対応えらんねぇぞ」
「なんでだよ」
「お前は好きだが、ブリッツウィングも好きだからな。その言葉は俺に言うものじゃねぇだろ」
「……」
「俺はブリッツウィングじゃねぇぞ」
「わかってるよ」
真剣な顔で覗き込まれて顔をしかめる。
わかっちゃいねぇよ、お前は。
アストロトレインが俺に持っている好意は確かに感じるが、それはまた別の種類のものだ。
例えばお前が俺を抱いたところで、お前は俺を通してブリッツウィングをみているに決まっている。
無理矢理手に入れようとすればブリッツウィングを手に入れられるくせに、
板挟みにはなりたくない。要らない痛みを抱えたくないし、ブリッツウィングを傷つけるのは嫌だ。
舌打ちして押しのけようとすると、悲しげな目で見下ろされた。
そんな目をするな。俺が悪いみたいじゃないか。
「オクトーン」
「駄目だ」
「俺は本気なんだ」
「嘘つけ」
嘘じゃない、と耳元で囁かれて思わずひゅ、と息を吸う。
「やめろ」
これ以上は駄目だ、抵抗しようとした腕をベッドに縫い止められて強引にキスをされる。
優しいけれどもそれは本来なら違うやつのためのものだと知っているから。
第一、お前の目は俺を見ていないじゃないか。
唇を引き結んで侵入を拒むと、焦れたようにアストロトレインが唇を舐め上げる。
「口、開けよ」
「こんなのは違う、お前だってわかってるだろ」
「何が違うんだ」
「…俺はオクトーンだぞ、いいのか」
「いいんだ、オクトーンがいい」
これ以上は無駄な抵抗だ。
どうせこいつは我を押し通すに決まっているし、それで後からこいつが苦しもうと俺には関係ないことだ。
溜め息をつくのと同時にアストロトレインの舌が滑り込んでくる。
くそ、と呟いてそれを掴まえて吸い上げてやる。
せいぜい気持ちよくしてもらうさ。でなけりゃ損だ。
ぐ、とオクトーンを抱き起こして頭を支え深く深くキスを交わしてようやくアストロトレインは口を離した。
「後悔すんなよ」
荒い息で呟かれた言葉にアストロトレインはただ笑って下腹部のハッチに手を伸ばした。
*2008/10/10
*2012/06/11 ブログから転載、加筆修正