midair





被弾した翼には大穴が開き、どうやら飛べそうになかった。
しかも墜落したのが離れた場所だった所為で、どうやらデストロンの皆には置いて行かれたようだ。
探しに来てくれてもいいだろうよ、と仲間の顔を思い浮かべる。
スタースクリーム、は無理だとしてもラムジェットやダージ、他のジェットロンの皆はきてくれてもよさそうなものだ。
アストロトレインはブリッツウィングの世話で手一杯か。
まさかメガトロンが自ら探しに来るわけもなく。
結局自分一人でどうにかして帰らなければならない。
エネルギー残量も心許ない。こうしている間にもエネルギーは消費されていってしまう。

溜息をついて、スラストはとりあえず現在地を確かめた。
基地からはやや離れているが、飛べさえすればなんて事無い距離だ。
飛べさえすれば。
うんざりしながら歩き出すと、突然後ろから肩を掴まれた。
振り向くとそこに居たのはサイバトロンだった。
飛び退ったスラストにむかって相手は呑気に手を振る。闘う意思のないことを示そうとしているらしいが、胡散臭すぎる。
「今闘う気分じゃないのさ、反応があったから来てみただけ。それに、」
エネルギー残量も少ないだろ、

付け加えられた言葉に思わず口がぽかんと開く。
「なんでわかったかって?一応スキャンしてみたのさ」
そういえばこいつはサウンドウェーブが目の敵にしているカセットボットだ。
サウンドウェーブの得意とするスキャン機能を兼ね備えていてもおかしくはない。
何を考えているのかわからないのもサウンドウェーブと同じだ。
とてもじゃないが信用できない。
大体戦闘直後なのに、どうしてサイバトロン基地に戻っていない?
戦闘には確か参加していたはずだ。
なんで仲間じゃなくこんなやつが来てしまったのだろう。ついてないにも程がある。

「ほら、エネルギーもわけてあげるからさ」
こっちおいでよ、と手招きされて寒気がした。
こいつ、なんかやばい。
後退りした瞬間、何故か視界が揺れる。
地面に頭を強かに打ち付けて、ぐ、と声が漏れる。
なんだ、なにが、起きた?
なにか胸の上に乗っている?
なにが、

衝撃で霞んだアイセンサーの向こうに相変わらずにこやかに笑う顔を見つけ全身が痺れたようになる。
「デストロンてのは素直じゃないねぇ」
親切はありがたくうけるものさ、スラスト君、と笑うサイバトロン。
押し退けようと、いや逃げようとするが身体はまるで言う事を聞かず、訳の分からない恐怖に取り憑かれる。
「そんなに怯えないでよ」
頬を撫で上げられて押さえきれず悲鳴が喉を突いて出た。
にやり、と歪められた顔を見てそれがこいつの嗜虐心を煽っただけ、と悟った。
「いい顔だねぇ。デストロン兵士とは思えないや。少し効き過ぎちゃったかな?」
胸のスイッチをを弄りながら笑う。何か電波のようなものを出しているのか。
「じゃあ、エネルギーをわけてあげるよ」
無理矢理ハッチをこじ開けられ、内部をまさぐられる。
何の遠慮もないそれに痛みが走るが、身体も武器も自分の意志では動かす事ができない。
「あ、もしかして口からがいいかな?」
ぐい、と急に引き抜かれた手が一緒に細いケーブルをちぎり取り、とんでもない痛みが全身を駆けめぐった。
あまりの痛みに声も出せないでいると、叫びの形に開いた口にぐっと指を突っ込まれ思わずえづく。
「げっほ、う、やめろ!」
「なんでさ、エネルギー欲しくないのかい」
さらに突き込まれた指に声を出す事はおろか、首を振る事さえ許されない。
と、急に視界が狭まってきた。
エネルギー切れが近い。
これで逃げられる、こいつから逃げられるならたとえここで永遠に見つけられなくてもいい。
最後にスラストは自分にまたがるサイバトロンを見上げにやっと笑った。
それを見て相手が表情を硬くしたのを見届けて、ざまあみろ、と呟いて。



声が聞こえて目を開く。
目の前にいたのはあいつではなく、ラムジェットだった。
「大丈夫かよ、お前。帰ってきてないから慌てて探しに行ったら、何森でぶっ倒れてんだよ」
エネルギー切れなんてだせぇな、と笑う。
ラムジェットの声を聞いて安心する日が来るなんて夢にも思った事は無かったが、その笑い声を聞いて急に緊張が解けた。
「もう少し寝かせてくれ」
そうしろ、とラムジェットが頷くのに、スラストは妙に安堵しつつ目を閉じた。




*2008/09/08
*2012/05/30 ブログから転載、加筆修正