midair





「いいか、抜かるなよ」
「お任せ下さい」
漏れ聞こえてきた声にさっと身を隠す。
「では頼んだぞ」
スコルポノックとヘッドマスター達か。
今度は何をたくらんでいるのやら。
三人の足音が遠ざかるのを確認してそっと廊下の先を覗き込んだ。
様子を伺っていると、突然扉が開き 「誰だ」と声を掛けられる。
「拙者だ」
気配を悟られたなら、隠す必要もない。
「シックスショットか、何をしている」
スコルポノックは意外だ、という表情で顔を覗かせた。
「たまたま通りかかってな」
その答えに満足していないのは明らかだが、それ以上答えてやる気はない。
心の内を見透かそうとでもするような視線を真っ直ぐ見返す。
気に入らない、と言わんばかりに舌打ちをして、スコルポノックは扉を閉めようとした。
素早くそれを押し止めると、スコルポノックは顔を顰める。
「何のつもりだ」
構わず無理やり身体を滑り込ませると慌てたように押し返してくるが、いかんせん力不足だ。
「貴様、一体…」
苛立ちを隠そうともせずに睨みつけてくる。
「なに、スコルポノック殿の部屋を少し見てみたかっただけだ」
それとも、何かみられたくないものでも?と付け加えると「好きなだけ見ればいい」と投げやりにいって後ろを向いてしまう。
ふん、と苦笑を浮かべ部屋を見回す。
壁に備え付けられた棚にはずらりとディスクが並び、納まりきらなかったものが床や机を埋め尽くしている。 そのくせ妙に整頓された印象を受ける。
寝台だけはディスクの侵入を受けず、綺麗なままだ。シーツにはしわ一つ無い。
「綺麗な部屋だ」
たくらみの片鱗さえ見受けられないほどに。
言外の皮肉を聞き取ったのかどうか、スコルポノックは振り向きもせずに鼻を鳴らした。
「本当の目的はなんだ?まさか本当に部屋を見たかったわけではないだろう」
「そうだと言っているが」
近づいてきたスコルポノックの口元は弧を描いているが、その目には相変わらず警戒するような光が湛えられている。
「お前はまだ信用できないからな」
「だがヘッドマスター達より有能だぞ」
「それはわからん」
肩をすくめて笑う。
「ガルバトロンにとってはそうかもしれないが、俺にはあの三人の方が役に立つ」
「ずいぶんと買っているな」
「ウルフは信頼するに足りる男だ」
スコルポノックがにやり、と挑発するような笑いを浮かべる。
鋭い目に浮かんだ誘うような色に、口がつり上がるのがわかった。
「忍法には色仕掛け、という手もある」
唇に噛みつく。
「秘密を聞き出すには有効な手段だ」
口内を蹂躙されているのに、スコルポノックは顔色一つ変えない。
それどころか「俺から聞き出すのは至難の業だぞ」 と笑ってお返しとばかりに噛みつき返してくる。
寝台にもつれ込みながら互いを貪る。
スコルポノックを押し倒すと、赤く燃え上がった瞳に捕らえられた。
ぺろ、と唇を舐めあげた舌の赤さに目が眩む。
「試してみないとわかるまい」
「お手並み拝見といこう」




*2008/09/12
*2012/05/30 サイト収納、加筆修正